脳神経外科漢方シリーズvol.1「打撲や青あざを早く治す漢方「治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)」
みなさん、こんにちは。
亀戸にある脳神経・脊髄クリニックの院長です。
当院には「ドアに頭をぶつけた」「転んで顔を打った」という日常のケガで駆け込んでくる患者さんがたくさんいらっしゃいます。
もちろん、まずはMRI検査で脳に異常がないか(命に関わる出血がないか)をしっかり確認するのが私たちの絶対的な使命ですし、痛みが局所的に強い場合や大きなたんこぶができてしまった場合は、骨折がないかレントゲンで確認します。
しかし、脳に異常がなく「ただの打撲と皮下血腫(たんこぶや青あざ)」だった場合、氷のうで冷やしたり西洋医学の痛み止めを飲んだりするだけでは、あの痛々しい青あざが引くまでにかなり時間がかかってしまいます。
そこで私のクリニックで大活躍しているのが、「治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)」という漢方薬です。今回は、このちょっと頼もしい漢方について、一般の方にもわかりやすく解説しますね。
治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)とは?その効果
名前の通り「打撲を治すための一つの処方」という、非常にストレートでわかりやすい名前の漢方薬です。江戸時代中期に医師の香川修庵により考案されて、浅田飴で有名な浅田宗伯により広められた、日本オリジナルの処方(和方)なんですよ。
漢方の考え方では、強くぶつけたりして内出血(血腫)が起きている状態を「瘀血(おけつ=血の巡りが滞り、古血が溜まっている状態)」と呼びます。治打撲一方は、この瘀血を改善するプロフェッショナルです。
- 主な効果: 滞った血の巡りを良くし、腫れや痛みを和らげ、内出血(皮下血腫)の吸収を早めます。
- このような症状に処方: ぶつけた後の青あざ、たんこぶ、打ち身による痛みや腫れ。捻挫など
当院では頭の大きなたんこぶや目のまわりに血がたまったような状態(パンダの目、ブラックアイ)のときに使います。また手術の後の皮下の血液貯留にも効果あると考えます。
西洋の痛み止め(ロキソニン(ロキソプロフェン)、ボルタレン(ジクロフェナク)など)が「痛みの神経をブロックする」作用なのに対し、治打撲一方は「患部の血流を改善して、溜まった血を早くお掃除して、腫れを早くひかせる」ことで、根本的な治癒を早めるアプローチをとります。
内服の仕方(飲み方)
一般的なエキス顆粒剤(粉薬のようなもの)の場合の飲み方です。
- タイミング: 1日2〜3回、食前(食事の30分前)または食間(食事と食事の間で胃に何もない状態)に飲みます。
- 飲み方: お水、または白湯(ぬるま湯)で飲みます。漢方の香りが苦手な方は、少量の水で溶かしてグッと飲み込むか、オブラートに包むと飲みやすくなります。
大人の場合は、少量のはちみつを混ぜると飲みやすくなります(1歳未満のお子さんは与えないようにしてください)。子どもの場合は「ミロ」(Nestle)に混ぜるといいです。
うちの子は「コーラ」で内服しようとしましたが、たしかにコーラの甘味が漢方の苦みを消すので飲めたのですが、漢方の先生に聞くと炭酸と漢方は効果が悪くなるなど相性が悪いようですのでやめさせました。
- 期間: 打撲をしてからなるべく早い段階(急性期)から飲み始めるのが効果的です。もちろん、数日時間が経過しても痛みが残っている場合はトライしてみてもいいでしょう。通常は腫れや痛みが引くまでの数日間〜1、2週間程度の短期間だけ服用し、治ったらやめてもかまいません。
治打撲一方の成分
桂皮(けいひ)、川芎(せんきゅう)、川骨(せんこつ)、甘草(かんぞう)、大黄(だいおう)、丁子(ちょうじ)、樸樕(ぼくそく)
気をつけるべき副作用
漢方薬は自然の生薬からできていますが、お薬である以上、副作用が全くないわけではありません。以下の点に注意してください。
- 胃腸の不調: 胃のむかつき、食欲不振、吐き気、下痢などを起こすことがあります(胃腸が弱い方は特に注意)。
大黄という成分がおなかを緩くする効果があります。ただし、ケガした直後は交感神経優位で便秘傾向になっていることも多いので、問題にならないことも多いです。
- 発疹・かゆみ: 体質に合わない場合、皮膚にアレルギー症状が出ることがあります。
- 偽アルドステロン症(まれ): 甘草が含まれているため、長期間大量に飲むと、血圧が上がったり手足がむくんだりすることがあります。ただし、治打撲一方は数日から数週間しか飲まないことがほとんどなので、過度に心配する必要はありません。
※注意
何か異常を感じたら、すぐに服用を中止して処方した医師にご相談ください。
まとめ:まずは脳神経外科医の診察を!
治打撲一方は非常に優れた漢方ですが、一つだけお約束してください。
「頭や顔を強く打った時は、漢方に頼る前に、必ず脳神経外科を受診すること」
見えないところで頭蓋内出血を起こしている可能性を否定することが大事です。「命に別状はない、ただの打撲だね!」というお墨付きをもらった上で、この治打撲一方をうまく活用して、痛々しい青あざとサヨナラしてくださいね。
他にも、頭痛やめまいに効く漢方など、脳外科領域で使える漢方薬はたくさんあります。私自身もまだまだ漢方をはじめとする東洋医学を勉強している身ですので、今後も学んだことをアウトプットする意味で、このブログに書いていきます。
